AERA 2022年8月15ー22日合併号
AERA 2022年8月15ー22日合併号

――2年前にAERAに登場したとき、主演映画「浅田家!」について「監督が見たい映像をどれだけ精度を上げて具現化できるかがテーマだった」と明かしていた。監督から求められることを具現化する作業と、演者としての表現欲求、どうバランスを取っているのか。

二宮:時と場合によります。この間やらせてもらった連続ドラマ「マイファミリー」は、毎日現場で監督に「こうしたい」というプランをプレゼンして、「いいね」とか「じゃあ、もうちょっとこうして」というレスポンスをもらって、時にセリフを変えたりもしつつ、やりたいようにやらせてもらいました。基本、僕は自分からプレゼンしていく方が動きやすいタイプ。ただ、「TANG タング」は僕が何かを考えるよりも、作品を通してどんな映像を見てもらうか、そこから何を感じとってもらうかが大切だと思った。なので、監督がつけてくださった演出に、なるべく早くレスポンスしていくことがテーマになりました。

■健の動きは監督の動き

二宮:「言っている意味がわからない」となるのが一番怖かったので、とにかく監督が話していることを聞いて、やっていることを見て。段取りで、監督が動いて見せてくれることもありました。僕、動きを真似るときは正確にやってしまうんです。だから、健の動きは、ほぼ監督の動きです(笑)。

――そんな二宮が、「唯一、自分発信でこだわったシーンがある」という。

二宮:終盤のあるシーンで、健がタングに「疲れちゃったよね」と声をかけるんです。それは台本にはないセリフで、現場に立った僕から出てきたものだった。そこだけはどうしても入れたかった。見てくださる方に「あ、健はもう我々が思っていたより、タングを人間扱いしていたんだ」「実は誰よりも一番近くで寄り添っていたんだ」と、驚きをもって感じてもらえるなと思ったんですね。この映画は、ダメだった健がこんなに成長しました、を見せる物語でもある。タングとの何げない関係性でそれが表現できれば、成功だろうという思いもありました。

――心を揺さぶる場面も多いが、二宮が終盤に見せるあるシーンは、エモーショナルな表現が凄まじい。現場でもスタッフを唸らせたシーンだという。撮影時のエピソードを尋ねると、「圏外だったんです」という謎の答えが返ってきた。

二宮:僕、そのときYouTube(「ジャにのちゃんねる」)の編集をしていたんです。でも現場は圏外でWi-Fiもなくて、データが全然落とせなくて。当時はちょうど3回目の動画をアップしたくらいで、僕がやっていることが世間に「バレた、バレた!」というタイミングであり、メンバーになるみんなを捕まえに行くロケの編集をしていた時期でもあった。撮影と並行しながら、裏側ではホテルに戻ってちょっとずつデータを落とす、という地獄みたいな作業をずっとやっていたんです。そんな自分の状況がつらすぎて、あのシーンは素直に泣けた気がします。

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