AERA 2022年8月15ー22日号より
AERA 2022年8月15ー22日号より

「自己看破できた方々は、別居している家族・親戚や友人知人など、同居家族以外に相談できるチャネルを持っている傾向があります。こうした社会関係資源は重要です。21年の被害件数が増えたのは、コロナ禍の影響で社会関係資源が毀損し、高齢者の孤立が進んだことが影響を与えた可能性も推察されます」

 では、私たちにできることは何か。まずは高齢者に限らずすべての人が「誰しも被害者になりうる」という意識を持つべきだと荒木さんは言う。

「高齢者がターゲットにされやすいのは、独居が多く、在宅時間が長く、固定電話を使い、着信番号を確認する習慣がない、といった生活様式も要因です。高齢者に比べ、平均的に認知機能が高く、周りの人に相談しやすい環境がある現役世代でも、他者に相談しにくい案件では多くの人が被害に遭っています」

AERA 2022年8月15ー22日号より
AERA 2022年8月15ー22日号より

■対応を決めておく

 帰省時にできることは?

「詐欺に遭った本人を責めるのはもちろん、第三者の被害に関するニュースを一緒に見ている時にも『こんな馬鹿げたものに引っかかって』などと、被害者に落ち度があるような話し方をすることは避けましょう。そういう言い方が、さらにお年寄りの詐欺脆弱性認知を低める可能性があります」

 つまり、“あんなのはバカが引っかかるものだ、だから私は大丈夫だ”という考え方につながったり、また、日頃から周囲がそういう態度をとっていると、被害に遭っても隠すなどしてさらに社会的孤立を深めることになりかねない。

 せっかくの帰省だ。家族を名乗る人や知らない人からこんな電話があったら最初に誰に連絡をする、連絡がつかなかったらここに連絡をする、のように家族で話し合って、「複数のチャネルを用意しておきましょう」と荒木さんは言う。警察の相談ダイヤル#9110や消費者ホットライン188、友人知人の連絡先などを、見えるところに貼っておくのもいいだろう。

「犯人は、緊急で複雑な判断の必要性を言葉巧みに述べ、緊張感をあおります。その現場で高齢者が判断に迷わないよう、事前に対応を明確に決めて提示してあげることが有用だと感じます」

(編集部・高橋有紀)

AERA 2022年8月15-22日合併号