東尾修
東尾修
この記事の写真をすべて見る

 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、“打高投低”時代の投手について論じる。

【写真】パ・リーグの最優秀選手賞を受賞したオリックス・山本由伸投手

*  *  *

 2021年が間もなく終わり、2022年が始まります。21年は東京五輪が開催され、スポーツ界も大きな注目を集めた年となった。世界が新型コロナウイルスと闘っており、まだ終息の見通しは立っていないが、その付き合い方も変化している。アスリートは多くの苦労があったと思うが、結果が出た選手、出なかった選手も、その一瞬にかけた思いだけは大切に持っていただきたい。お疲れ様でした。

 野球界もたくさんのことがあった。東京五輪の金メダルもそうだし、セ・リーグもパ・リーグも前年最下位のチームが優勝を遂げた。これは年間の戦い方一つで大きく順位を変えられるということ。毎年のように登場する新たなトレーニング理論、選手の気質の変化など、指導者も選手も常に勉強する必要があるという点で、大変だと感じる。

 日々進化するプロ野球界。打高投低と叫ばれて何年がたっているだろうか。打者は、自分の身を守るプロテクターが進化し、さらにバットも選手の特長に応じて色々と作り方も変わっている。そういった道具の革新は、自分の体を駆使して投げるしかない投手にとって、より厳しい戦いとなっている。昔からよく言われた好打者の条件である「3割」「30本」「100打点」だが、各部門でその数字を軽くクリアする選手も出てきている。逆に投手は「20勝投手」は何年かに1人となった。

 今の野球は、投手が息をつく暇がない。昔の100球と今の100球に投手がかけるエネルギーがまったく違う。「このチームの下位打線なら、この力具合で」という省エネ投球が難しくなっている。だからこそ、本当の意味で力のない投手は、「中6日」では回復しきれないくらい、疲弊する状況が生まれる。ヤクルトの高津監督が、日本シリーズでも第1戦から第6戦まで違う先発投手を立てたが、1試合にかけるパワー、その回復力をしっかりと見極めた結果だろう。

次のページ