日本では年々、精神科の受診者が増えており、国際的な疫学調査などさまざまな研究結果から、「4人に1人は一生の間に何らかの精神疾患にかかる」ということがわかっています。精神科医で東京都立松沢病院院長の水野雅文医師が執筆した書籍『心の病気にかかる子どもたち』(朝日新聞出版)が1月20日に発売となります。2022年度から高校の学習指導要領が改訂され、保健体育の授業で「精神疾患の予防と回復」を教えることになることから、生徒だけでなく保護者や教員にも正しい知識を得てもらうための一冊です。書籍からその一部を抜粋してお届けします。
* * *
日本では年々、精神科の受診者が増えています。厚生労働省が3年ごとに実施している患者調査によると、精神疾患で医療機関に通院または入院している患者さんの数は1999年には約204万人でしたが、2002年には約258万人に。さらに17年(最新値)は約419万人となり、15年間で約1・6倍に増加しています。
厚生労働省は13年、今までの4大疾病のがん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病に、精神疾患を加え、「5大疾病」とし、これらの疾患は国民に広くかかわる疾患として、地域における予防・治療・回復のためのリハビリテーションなどの重点的な対策が必要であるとしました。
新型コロナウイルスの感染が拡大してからは、自由に行動できないストレスや活動量が落ちたことによる「コロナうつ」が増えたなどと話題になっていますが、この患者調査の数字はコロナ禍が始まる前のもの。増加傾向はコロナ禍に関係なくずっと続いています。
一口に精神疾患と言っても、いろいろな病気がありますが、どのような病気が多いのでしょうか。
17年の調査で通院している患者さんの病気別内訳を見ると、多い順にうつ病、不安症、統合失調症となっています。うつ病は15年前の約1・8倍に、不安症は1・7倍に、統合失調症は約1・2倍に増加しているのです。