櫛形荘で働くチャンドラさん。外国人介護職員受け入れに際し、施設は家族会を実施。入居者の家族からは「遠い国から来てくれてありがとう」といった言葉が出た(photo:澤田晃宏)
櫛形荘で働くチャンドラさん。外国人介護職員受け入れに際し、施設は家族会を実施。入居者の家族からは「遠い国から来てくれてありがとう」といった言葉が出た(photo:澤田晃宏)

 2040年には約69万人も不足するとされている介護職員。そんな人手不足にあえぐ介護業界で、期待が高まっているのが外国人介護職員だ。これまで技能実習生の多くはベトナム人だったが、彼らが求める賃金水準が上がっていることなどを背景に、近年では他国の介護職員を求める声も出てきているようだ。AERA 2022年1月3日-1月10日合併号から。

【データ】介護福祉士養成施設への入学者数と外国人留学生の状況は5年間でどう変わった?

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 ミャンマー最大手の送り出し機関「ミャンマー・ユニティ」(ヤンゴン)では現在、新型コロナウイルスによる新規入国規制で、待機中の技能実習生が1040人いる。そのうち259人が介護だという。

■高齢者を敬う文化 介護職に向いている

 ミャンマーの最低日給は4800チャット(約300円)と、日本とは大きな経済格差がある。出稼ぎに行きたいと考える若者は多く、治安のいい日本は最も人気があるようだ。

 ミャンマー・ユニティの北中彰最高顧問は、「お年寄りを敬う敬虔な仏教徒の多いミャンマー人は介護職に向いている」と指摘し、こう続ける。

「いい行いをすれば、巡り巡って自分に返ってくるという仏教の教えから、徳を積む介護の仕事を進んで目指すミャンマー人は多い。国内に日本のような介護施設はありませんが、家族の介護をすることは当たり前で、身よりのない老人をボランティアのスタッフが世話をする施設はあります」

 山梨県南アルプス市の特別養護老人ホーム「櫛形荘(くしがたそう)」は1月、初めて技能実習生を受け入れた。新型コロナの影響で一人は入国待ちだが、合計2人のネパール人を採用した。

「以前は専門学校から新卒学生を採用できていたが、昨年からは介護実習に来る学生もゼロ。人手不足を派遣社員で補っていましたが、40代以上の無資格の方が中心で、1年も続かない。3年ほど前から外国人の採用を考え始めました」(施設長の福田修さん)

 外国人採用のセミナーに足を運んだり、ベトナムを始め、海外の複数の日本語学校を訪れたりするなか、ネパールからの受け入れを決めた。その理由を福田施設長はこう話した。

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