ジャーナリストの田原総一朗氏は、外交の重要性を説く。
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2022年は日本の外交において重要な年になるはずだ。
昨年4月16日に、ワシントンでバイデン・菅会談が行われた。日本では大きな話題とはならなかったが、米国で新大統領が登場して、いきなり日米首脳会談が行われたのは、注目すべき出来事だった。これまでは、まず米英などの首脳会談が行われて、日本の順番はそれ以降になることが多かった。
バイデン大統領がいかに日本に期待を抱いていたか。その課題は、もちろん米中対立である。
かつては、中国の経済力は日本よりもはるかに下位であったのが、10年には日本を抜いて、米国にとって脅威的な存在となった。もちろん、中国は軍事力もすさまじい勢いで拡大させていて、この面でも米国にとって許しがたい存在となっている。
米国では、習近平体制が台湾を国内問題と捉えている、との見方が大方を占めている。
実は、習近平氏が国家主席になる以前に彼と会った日本人はいずれも、習氏はバランスが取れて、良識のある人物だと評していた。
たとえば、朝日新聞の主筆であった船橋洋一氏や中国大使を務めた丹羽宇一郎氏は、習氏は国際的な常識を持った、バランスの取れた人物であった、と私に語った。
私自身、胡錦濤体制時代に、一対一で習氏と30分ほど会談しているのだが、習氏はバランスの取れたジェントルマンだと捉えていた。
だが、現在の習氏はどんどん独裁色を強めている。第2の毛沢東になろうとしているかのようだ。
オバマ氏は大統領当時、民主主義国家の大統領として慎重に政治を行って、中国の軍事的な暴走を阻止できなかった。そして、トランプ前大統領はオバマ氏を「できない政治家」と非難し、自分は「できる政治家になるのだ」と宣言して、グローバリズムもデモクラシーも否定する政治を強行、中国を完全に敵視する政策を断行した。
そして、それ以前のどの大統領も口にしなかった「世界のことはどうでもよい。米国さえよければよい」と宣言した。その宣言に米国民の大半が賛同したのである。米国民の多くが、これまで米国は世界のために犠牲になり続けてきた、と強く感じていたからだ。