米フェイスブックの創業者、マーク・ザッカーバーグ氏。事業の主力を「メタバース」と名付けられた仮想空間に移すとして、社名も「メタ」に変えた
米フェイスブックの創業者、マーク・ザッカーバーグ氏。事業の主力を「メタバース」と名付けられた仮想空間に移すとして、社名も「メタ」に変えた
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 米フェイスブック(FB)について元社員が内部告発し、大きな話題となっている。AERA 2022年1月17日号で、その驚きの内容を取り上げた。

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「フェイスブックは利用者よりも天文学的な利益を優先している」

 2021年10月、米上院の公聴会。グレーのスーツに身を包んだ元FBの従業員、フランシス・ホーゲン氏は、同社の問題点をこう指摘した。

 米ウォールストリート・ジャーナル紙は昨年9月、「フェイスブックファイルズ」と題する調査報道を始めた。傘下の写真投稿アプリ「インスタグラム」が10代の少女に心理的な悪影響があることを知りながら対応を怠り、また一部の政治家を「特別扱い」するしくみがあることなどを連日報じた。

 この報道の土台となったのが、ホーゲン氏が社内から持ち出した大量の内部文書だ。ホーゲン氏は内部告発者を支援する団体と協力しながら、戦略的に告発の内容を伝えていった。この文書をもとに、欧米メディアが異例ともいえる協調態勢を取って連日報じた。

 文書はホーゲン氏の弁護士によって米証券取引委員会(SEC)に開示され、一部を黒塗りにして米議会に提供された。ほかの欧米メディアも同様の報道を開始。朝日新聞は文書を他の報道機関とともに確認した。

■ジャスティン・ビーバーは「悪影響を与える」有名人

 内部文書にはどんなことが書かれていたのか。多くは、ホーゲン氏がスマートフォンでパソコンの画面を撮影したとみられる写真だ。文書は「10代のメンタルヘルス」「インド」「米大統領選」などのテーマごとに分かれており、テーマ別のファイルだけでも6千ページを超える膨大なものだった。

 インスタの若者に対する悪影響については、19年11月に社内で共有された資料があった。日本を含む6カ国の約2万人を対象にした調査で、自殺願望や自傷行為の悩みを抱える10代の少女の13.5%が、インスタをみると状況が悪くなると答えた。身体の悩みを抱える少女の32.4%が状況を悪くすると答え、「良くする」を上回った。

 20年3月に共有された別の社内調査では、インスタは有名人の投稿が多く、「完璧に見えなければいけないというプレッシャー」があるとしている。こうした結果、摂食障害、うつ、孤独などにつながりうるという。

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