元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。
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先日来、我がマンションの隣の家が取り壊されて、マンションの新築工事が続行中である。前の家の風情ある大きな三角屋根は鳥たちの休憩場所になっていて、様々な都会の鳥が次々やってくるのを見るのが好きだった。今は職人さんが着々と家を作り上げていく様子をフムフムこのように家は出来ていくのだなと興味深く眺めている。
それはいいんだが、悲しかったのは、庭の木が全部撤去されたことだ。我がマンションとの境界の生け垣も綺麗(きれい)さっぱりなくなって、地面はコンクリートで固められた。しかしもちろん人様の土地のことに私がああだこうだと意見する筋合いなどない。
それに、想像するにそれは致し方ないことで、高い土地を少しでも有効利用せねば各種税金などの負担が重くのしかかるのであろう。いまどき、貴重な土地にゆったり木など植えてる場合じゃないのだ。なまじ地面があると雑草が生えて手入れが大変というのもあるのかもしれない。植えるとしたら「シンボルツリー」というやつで、小さく切り取られたコンクリの隙間に1本の木を植えるのが我が近所の定番である。きっとそれがギリギリのところなのだ。