グーグルマップの「ストリートビュー」を使い空き家を探して侵入し、1億円近い金品を盗んでいた男に有罪判決が下された。ストリートビューが悪用される懸念は以前から指摘されており、規制を求める声も出ている。ただ、犯罪に詳しい専門家によると、規制が犯罪抑止につながると簡単には言い切れないようだ。
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福岡地裁小倉支部で昨年末、窃盗罪などで懲役2年6月の有罪判決を受けたのは鹿児島県出身の無職の男(33)だ。
報道によると男は2017年ごろから4年にわたり、グーグルマップのストリートビューを使い空き家を探して侵入し金品を盗んだ。「テレビ番組で、生前整理されていない空き家の問題を知って犯行を思いついた」と供述しており、警察が把握している事件は福岡や佐賀県などで約440件、被害総額は3000万円とされる。ただ、公判では被害総額がさらに多い1億円近くにのぼることが明らかにされたという。
家や周辺の環境が“丸見え”になるストリートビューが悪用される懸念は以前から指摘されており、2018年には大阪などで侵入しやすそうな高級住宅を探して空き巣に入った男らが逮捕されている。今回の事件でも、ネット上ではストリートビューの規制を求める声が散見される。
■現実世界でも狙われやすい場所
ただ、規制が即、犯罪抑止につながるとは簡単には言い切れないようだ。
「ストリートビューで空き巣や路上犯罪者が目をつけた家や場所は、現実世界でも犯罪者に狙われやすい場所なのです。ストリートビューに規制をかけても、犯罪者は狙いを定める方法を現実世界に移すだけです。根本的な解決にはなり得ません」
そう指摘するのは、数多くの犯罪を分析し、知見に基づいた防犯指導を行なっている立正大の小宮信夫教授(犯罪学)だ。
コロナ禍で対面の機会が減って以降、小宮教授はオンラインでの防犯講習も行っているが、その際はストリートビューを活用している。今回の男のような「犯罪者の視点」に立って、狙われやすい場所を指南している。