「さがす」で佐藤さんが演じたのは「どこにでもいるおっさん」だが、佐藤さん自身は、人を演じる上で、“普通”を疑う感覚を忘れない。
「人間が7人いたら、7通りの闇があると思う。7通りの幸福、7通りの奥深さがあると思うんです。今も、若いスタッフや俳優と一緒に仕事をしながら、『いいな』と思うと、つい声をかけたくなる。それは、見ていてこちらが嬉しくなるからです。僕は、日常でも、言動が印象的な人に出会うと、『おっ』って思う。コンビニの店員さんで、『今度こういう役が来たらまねしてみよう!』と思う人が現れたりしたときは、その人のことを、心の中で勝手に『スタア』と呼びます(笑)」
(菊地陽子、構成/長沢明)
佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年生まれ。愛知県出身。96年に演劇ユニット「ちからわざ」を旗揚げ。舞台をきっかけに堤幸彦監督の目に留まり、2000年ドラマ「ブラック・ジャックII」で映像デビュー。近年の代表作に映画「銀魂」シリーズ、ドラマ「浦安鉄筋家族」「ひきこもり先生」、「勇者ヨシヒコ」シリーズなどがある。映画「memo」(08年)、「はるヲうるひと」(21年)では、監督・脚本・出演を務めた。
※週刊朝日 2022年1月28日号