最新映画「ONE PIECE FILM RED」で歌姫・ウタの歌唱キャストを演じる。世界中の人々を魅了する歌姫の心の内にAdoさんが見いだしたものとは。AERA 2022年8月8日号の記事から紹介する。
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──世界の歌姫・ウタの歌唱キャストを演じるのは、気鋭のシンガーとして活躍するAdo。インターネットから生まれた「歌い手」の自分が、メジャーシーンを駆け抜ける作品に携わる日が来ることは、想像もしなかったという。
幼い頃からテレビをつければアニメが流れていて、街中にはポスターやグッズがあふれている。周りにも、ワンピース好きの少年少女がたくさんいました。いつも面白い仕掛けをしていることは知っていましたが、とても大きな作品ですし、ボカロシーンで活動する自分が関わることはないと思っていました。
だから、最初にお話をいただいたときは、洋服のワンピースと勘違いして、頓珍漢な返事をしてしまいました(笑)。海賊のほうだとわかったときも、思わず「嘘だっ!」って返してしまうくらいびっくりしました。
■ネガティブな感情も
──素性を隠しながらも、その歌声で世界中を熱狂させるウタの姿は、Ado自身とも重なる。だが、初めてウタを見たときは、「自分とは真逆な存在」だと感じた。
ウタはすごくカラフルで、とても可愛い女の子です。性格もお茶目で元気で。私自身は、普段から悲しみや怒り、憎しみから生まれるパワーを歌うことが多いんです。だから、ウタに私の声が乗っていいのか……と心配というのが正直な感想でした。
ただ、ストーリーや脚本、生い立ちを知るうちに、ウタの中に眠る芯のようなものも感じました。悲しみや怒りといった人間に欠かせないネガティブな感情も、ウタは全部あらわにしている。歌姫って神聖で輝かしいイメージがありますが、ウタは人間として輝いているんです。ネガティブな感情や怒りの感情も持っている、そんな人間臭いところは、自分とも少し似ていると感じます。