友人の小児科医・あーちゃんが院長をつとめる小児科クリニックには、「うさぎカード」という自己申告カードがあります。

 持病や障害のために長く待つことが難しい場合に、受付にあるこのカードを診察券と一緒に出すと配慮してもらえます。医療的ケアなどすぐにわかる障害の他に、発達障害や、外からは見えない重い持病がある場合にも有効です。置く場所は患者さんが出しやすい位置を検討して決まったようです。

■待てる日も待てない日もある

 あーちゃんに、うさぎカードを導入したきっかけを聞くと、こんな答えが返ってきました。

「このシステムを最初に考えたのは、私ではなく看護師さんだよ。以前は看護師さんが待つのが難しいと判断した時に、早く呼べるように配慮していたのだけれど、しばらくすると、同じお子さんでも待てる日もあるんだとわかったりして、自己申告にしようと決まった」

 あーちゃんは、自己申告制にした背景のひとつとして、保護者側にも「ヘルプを出して良いんだ」という意識を持ってほしいと言います。

 確かに、クリニックが配慮したとしても、「うちの子は待てないと思われてしまった」など、患者さんが特別扱いを望まないケースもあれば、慣れていくうちに、配慮されて当然という雰囲気が生まれてしまう場合もあります。

■医療者の理解と患者側の協力

「いつもは大丈夫だけど、今日はちょっとつらい」「今日は待てる」と、その日のお子さんの状態で判断できるのは、お互いにとってメリットが大きいと思います。 

 そしてきっとそこには、しっかりとしたスタッフと患者さんの信頼関係があるのだと思います。

 先述のAERAの記事では、特別支援学校の先生方の受診サポートの事例が紹介されていました。その学校では、歯科や眼科や耳鼻科の診察室や、治療に使う器具の写真を生徒に見せて診察の手順を伝えているそうです。スモールステップで目標を設定し、耳のまわりが過敏なお子さんには、初めは綿棒、慣れてきたらピンセット…とステップアップしてから受診するそうです。

 障害のある子どもがスムーズに受診するためには、受け入れる側の理解と、患者側の協力が不可欠です。「フリーアクセス」が本当に当たり前になる社会のために、障害児のニーズを発信していくこともとても重要だと思っています。

AERAオンライン限定記事

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