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南太平洋のトンガで起きた海底火山の大規模噴火。大噴火が続けば、エネルギー政策にも影響を及ぼす可能性がある。AERA 2022年1月31日号の記事を紹介。
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災害リスクマネジメントが専門の立命館大学環太平洋文明研究センターの高橋学特任教授は言う。
「噴火の影響で日照量が減少すれば、再生可能エネルギーの一つである太陽光発電の効率も悪化すると考えられます」
火山学者で京都大学の鎌田浩毅(ひろき)名誉教授もこう話す。
「トンガの噴火が(フィリピンの)ピナトゥボ火山の噴火と同クラスということは、気温の変化は一時的かもしれませんが、起きると考えたほうがいいでしょう。ピナトゥボ火山の場合は北半球だったので、南半球で起きた今回の噴火の日本への影響はよくわかりません。ただ、ニュージーランドやオーストラリア、アフリカなど南半球の穀倉地帯が冷夏によって作物が取れなくなれば、世界的な食糧危機が訪れる可能性は考えられます」
■「脱炭素」政策に影響も
その上で鎌田名誉教授は、地球温暖化で喫緊の課題となっている脱炭素やカーボンニュートラル(温室効果ガス実質排出ゼロ)政策は転換を迫られる可能性があると指摘する。
「20世紀は、それ以前と比べ巨大噴火はほとんどなく、そのことが世界の平均気温を上昇させた一因となったとも考えられています。その結果、日本をはじめ各国は温暖化対策に取り組み、太陽光発電など再生可能エネルギーを活用した脱炭素社会の実現を目標に掲げています」
しかし21世紀になり、トンガのようなパワーをためた火山が、人類や文明に大きな影響を与える火山爆発指数(VEI)7以上の破局噴火を起こしても不思議ではない。そうなった場合、太陽光が遮られ、例えば太陽光発電はエネルギー源として十分に賄えるのかという問題などが生じると言う。
「地球科学的には今後、火山噴火によって脱炭素とカーボンニュートラル政策がひっくり返る可能性は否定できません。次の課題として、エネルギー源を石油や石炭に頼るかどうかなど、地球の時間軸のレベルで『長尺の目』を持って捉えていく必要があります」(鎌田名誉教授)
(編集部・野村昌二)
※AERA 2022年1月31日号より抜粋
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