「少しでも早く情報を届けることが、避難を判断する『猶予』になります。1ミリ秒でも早く、そして確実に情報を伝えることにこだわってきました」
特務機関NERVでは、警報や注意報の発表、津波の到達状況などあらゆる情報を自動で処理し、アプリやツイッターに反映させている。石森さん自身も、警報発表はNERVアプリの通知音を聞いて知ったという。ただし、機械的なシステムにすべてを任せているわけではなく、観測情報には常に自分たちの目で注意を払っている。
今回の噴火では、気象庁が15日19時3分、「若干の海面変動が予想されるが、被害の心配はない」と発表していた。ただ、20時ごろから各地で潮位の変化が観測され始めた。石森さんら特務機関NERVのエンジニアは情報収集を続けながら、連絡を取り合ったという。22時47分には、石森さんは個人のツイッターにこう投稿した。
<注意報に切り替わるかもしれないと心配して見ております>
石森さんはこう振り返る。
「潮位だけで『津波』と言うことはできませんが、少なくとも各地で津波注意報レベルの潮位変化が観測されていました」
■石巻の実家で注視した
石森さんが特に注視していた小笠原諸島・父島の観測データを見ると、津波注意報が出る直前には、月や太陽の引力を踏まえて想定される天文潮位と実際に観測された潮位の差「潮位偏差」が90センチ近くになった。奄美大島ではさらに大きく、120センチを超えていた。気象庁では20センチ以上1メートル以下の津波が予想される場合に津波注意報、1メートル超3メートル以下の場合に津波警報を出すことになっており、警報・注意報が出た時点で既にこの高さを超えていた。
ただし、今回の潮位変動は厳密に言うと津波ではない。気象庁によると、「地震に伴い発生する通常の津波と異なるが、防災上の観点から津波警報の仕組みを使って防災対応を呼びかけた」(地震津波監視課)という。