社員にもチャレンジの機会を与える方針で、従業員向けに新規事業のアイデアコンテストを開いたこともある。143件の応募の中から生まれたのが「eスポーツ事業」だったが、すぐ撤退した。

「やってみなければわからないけど、やってみたら集客できないことがわかり、撤退したんです。失敗でしたが、そこから学びがあればいい」

 何事にも貪欲にチャレンジする西村社長。だが、ただ闇雲に前進すれば良いというわけではない。ビジネスの成功には、押さえるべきツボがあると言う。西村社長はそれを「ボウリングのセンターピン」と表現する。

「PCR検査事業では、日本航空と提携し、飛行機に乗る前後のお客様が簡単に検査を受けられるようにしたことがセンターピンになりました。その後はドラッグストアやショッピングモールなどとも次々と提携できた。おかげで検査数も大きく伸ばすことができました。たい焼きでいえば“あんこの詰まったおなかの部分”にあたる勝負どころを押さえれば、尻尾の部分は取られてもいい。何があんこなのかを見極めることが大事だと思っています」

 現在のチャレンジは不妊治療への取り組みだという。妊活・不妊治療に関する最新情報を提供するポータルサイト「FeeMo」を開設し、相談窓口を設けた。

「不妊治療の分野でも、これまで同様に新しいことに命がけでチャレンジしていきます。今年4月から不妊治療の保険適用が拡大されますが、それをにらんで世間が驚くようなことをしたいと思っています。実現すれば、子供を望んでいる方々のためにもなるし、減少している出生数を5万人上乗せできると確信しています」

(本誌・鈴木裕也)

週刊朝日  2022年2月11日号