コロナ禍で多くの事業者が業績を落とした中、大胆な異業種参入で危機を乗り切った企業がある。エクスコムグローバル社だ。社名は知らずとも、きっとその事業内容を一度は耳にしたことがあるはず。その大胆すぎる発想の源はどこにあるのか、本誌は社長に直撃インタビューを試みた。
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郷ひろみが「タン、タン、ニシニシ、ニシ~タン」と歌い、女性芸人トリオ・3時のヒロインがタンバリンダンスを披露する美容内科クリニック「にしたんクリニック」のCM。「妙に耳に残る」とネットを騒がせている。このクリニックを運営するのがエクスコムグローバル社。タレントのイモトアヤコをCMに起用して話題になった海外用Wi‐Fiレンタルサービス「イモトのWiFi」を展開していた企業だ。このCMに自らも出演していた西村誠司社長(51)自身がCMキャラクターを選んでいるという。
「誰でも知っていて、番組でよく海外に出かけているイモトさんを起用しようと考え、思い切ってサービス名も『イモトのWiFi』にしてしまった(笑)。にしたんクリニックのCMも誰でも知っている人を起用したいと考え、郷さんにお願いしました」(西村社長、以下同)
実は郷ひろみが出演するCMの前には、同じく3時のヒロインと“スター”錦野旦の共演でフラメンコバージョンのCMを流していた。
「誰もが知るスターで、“にしたん”だから“にし”がつく大物タレントさんを探していた。何名かの大御所タレントの名前が挙がった中で、“西”ではないけど“ニシ”と読む錦野さんの名を思いついた。しかも錦野さんの名前“旦”は“たん”とも読む。それで錦野さんにお願いしました」
すでに、次のCMのキャスティングも考えているという。
「名前は言えませんが、前代未聞のCMになりそうです」
そう言って、ニヤリと笑う西村社長はまさに“発想の人”でもある。
コロナ前、Wi‐Fi事業は好調で、2019年度には年間利用者数も100万人を突破していた。ところが、20年からの新型コロナウイルスの感染拡大で海外渡航者はほぼゼロに。緊急事態宣言後の売り上げは、前年同月比で98%のマイナスまで落ち込んだ。銀行からの融資で当座をしのぎながら、西村社長が考えたのは「コロナの逆風を打ち消す追い風になる事業は何か」だった。ひらめいたのがPCR検査の事業化だった。