最寄りの警察署に電話をし、詐欺電話について報告をしておくと、担当の男性警察官が自分は本物の警官である証拠を説明するので、気の毒になった。
その話によると、いま、我が家のまわりに集中的に電話がかかっているとのこと、多分、何人かのグループが一部屋で、役割分担をして集中的にかけているのだろう。
その様子を想像してみる。それにしても向こうも生き残りに必死の知恵をしぼっているのだろうし、こうなったら知恵比べの感もある。
「一度かかるとまたかかってくるから気をつけて下さい」と、本物の警官が言う。留守電をちょっとの間、外しておいた時の出来事なので、「私は大丈夫」という過信はいけない。
それにしても昔はのどかだった。
十年ほど前、初めてかかったのが、私一人の時に、つれあいが電車の中で痴漢をしたから駅長室に預かってもらっており、示談にするからお金を持って来て欲しいという。弁護士を名乗る男で実に単純明快、その痴漢男性について質問したら、すぐ切れた。
下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。この連載に加筆した『死は最後で最大のときめき』(朝日新書)が発売中
※週刊朝日 2022年2月11日号