「007」シリーズなどハリウッド大作で引っ張りだこのデンマーク人俳優、マッツ・ミケルセン。ゲームのキャラクターを演じたことで日本ではゲーマーにも知られた存在だ。新作「ライダーズ・オブ・ジャスティス」について語った。
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マッツは交流の深い監督の作品に出演することが多く、今作の監督、アナス・トマス・イェンセンもそのひとり。ともすれば深刻になりがちな社会的テーマを、北欧風ユーモアで絶妙に描くこの個性派監督のもとで、マッツは軍人カットにあごひげを蓄えた世に怖いものなしのマークスを演じた。
──脚本を初めて読んだ時の感想は?
「監督のアナス・トマスは、本作で二つの課題を達成したと思う。一つは自分の視点で書くこと。彼独特のダークなユーモアで、あたかも寓話のような雰囲気を作り上げた。二つ目は、父子の関係に繊細な目を向け、共感を呼ぶ物語に仕上げた。一見クレージーに思える世界を、人間的で美しいものに塗り替えている。その手法は前例がなく素晴らしいと思った」
──マークスという軍人を、どう演じましたか?
「典型的軍人像というものがあるとしたらマークスはそれに近いのではないかな。自己に厳しく、他人に弱点を見せようとしない。悩みや不安を家族や友人や他人に打ち明けない。マークスは古風な人間で、悩みや不安を認められないでいるんだ」
──感情をうまく表現できず、手が先に出る男マークスを、どう理解しましたか?
「彼は軍人として一生を過ごしてきた。明らかにPTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しんでいる。人生の目的もなく、信じているものもない。目の前のことしか考えていないんだ。だから傷ついた自分を癒やす方法を知らない。妻を殺した復讐の相手だと思い込んだら、その人の家のドアをたたきに直行してしまう。彼は妻の死が偶然ではないと思い込んでいる。それに対し自分が可能な唯一の方法で反応、対処している。彼の頭の中には復讐という文字しかないんだ。それが彼の人生のアプローチだ。心の底でそれを揺るがす何かに直面すると、爆発してしまう。自分でもそれを意識している。それはいつ、なんどき起こるかもしれない(笑)」