日本が行っている水際対策も然りです。世界保健機関(WHO)は1月19日、新型コロナウイルスの専門家による緊急委員会の結果を公表し、実施する価値がなく、経済的・社会的な負担を各国に強いるだけだとし、新型コロナに関わる渡航規制を撤廃するか緩めるよう加盟国に勧告しました。それにもかかわらず、日本において、外国人の新規入国は停止されたままです。国により感染状況は異なってはいますが、外国人だから新型コロナウイルスを持ち込むわけでは決してありません。日本人も、ワクチン接種の有無やPCR検査の結果の有無に関わらず、帰国の際に14日間の隔離が強制されていては、国外に出ることは基本的に不可能です。
国内でこれだけ感染が広がっているのに、国内の移動は現実的に何の制限もなくできるのに、水際対策を強化し続けることに対して疑問に感じているのは私だけなのでしょうか。水際対策の緩和や撤廃を発表する国が増えてきましたが、これまでの水際対策の変遷から、日本が緩和・撤廃するのはきっと最後の方なのだろうと容易に想像ができることを悲しく思います。
2月6日には、政府は最終段階の治験完了前の実用化を可能とする「条件付き早期承認制度」の適用の検討に入ったという報道がありました。政府は数百人規模の中間解析で顕著な有効性が確認されることなどを条件に適用することを想定しているようですが、私は、効くか効かないか分からない、副作用の情報も不十分な治験完了前の薬を内服したくありません。この報道を聞き、恐ろしく感じるとともに、なんてお粗末な制度なのだと感じました。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックから2年が経過しようとしている今、行政主体のコロナ対策から現場目線、患者さん目線の対策に、まずは方向転換していただけることを願ってやみません。
山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員