オミクロン株が爆発的に広がり、未だに流行のピークが見えない。感染者拡大とともに増えているのが、濃厚接触者だ。自宅待機を求められることで、人手が不足し仕事が回らない現場は疲弊し始めている。AERA 2022年2月14日号から。
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「ついに、わが家にコロナが来ちゃいました」
埼玉県に住む介護職のKAZさん(49)は頭を抱える。1月下旬、妻(48)が新型コロナウイルスに感染した。娘(20)や息子(18)と共に濃厚接触者となり、自宅待機になった。
自宅は一部二世帯住宅。妻は個室に隔離し、二つあるトイレの一つを妻専用にした。玄関や風呂など共用部分には入らないとルールを決め、食事はベランダ側の窓から差し入れた。
家族は家でもマスクをし、健康観察や消毒の徹底を怠らない。それだけでも大変だが、濃厚接触者は不要不急の外出は自粛しなければならない。KAZさんは言う。
「家族が感染することで濃厚接触者になると、感染者より長く自宅待機しなければいけません。そこまで仕事を休める人がどれだけいるのでしょうか」
■職場が回らなくなる
感染者の急拡大とともに増えているのが、濃厚接触者だ。
政策研究大学院大学の土谷隆教授(統計数理学)が2月3日までに試算したところによれば、今のペースで感染拡大が続いた場合、東京都の感染者数はピーク時に1日2万3千人を数える。そして7日間自宅待機したとすると、濃厚接触者は79万人になるという。これは東京の全人口の約17分の1。つまり都民の「17人に1人」が、濃厚接触者になる恐れがあるのだ。
「合理化が進んで多くの会社が最低限の人数で回っています。その結果、濃厚接触者になって1人でも休むと職場が回らなくなり、社会機能が麻痺(まひ)する可能性があります」(土谷教授)
感染者は発症した翌日から原則10日まで療養が必要で、同居家族は感染者との最終接触後も原則7日間の自宅待機が求められた。それでは社会が回らないため、政府は2日、マスクの着用など家庭内で感染対策を始めた日から7日間発症しなければ、濃厚接触者としての待機期間を終えられると改めた。ただ、途中で他の家族が陽性となった場合は、その時点から新たに7日間の待機が必要になる。