岩合:意思疎通が図れたかどうか、こちらの思いだけなんでわからないですけどね。動物って目と目が合うと敵対意識を持つと言われてますけど、そんなときは目をパチパチとしばたたかせると、向こうはすごく安心するんです。
林:日本人が岩合さんの写真が好きなのは、どのネコも幸せそうだからですよね。
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林:私、よくスーパーの帰りにノラネコに呼び止められるんです。「ちょっとあんた、なんか置いていきなさいよ」って感じで(笑)。だからウィンナーをあげたりするんですけど、ネコ好きの人ってわかるんですかね。
岩合:わかります、わかります。この人はくみしやすいというのが、ネコはすぐわかります。
林:写真を撮るときは、ポケットにちょっとおやつを忍ばせたりするんですか。
岩合:最初にやってしまうと、食べ物のことしか考えなくなって、目つきが違ってくるので、最初には与えないですね。終わったところで「ギャラだよ、ありがとう」と言って与えます(笑)。撮影していて、連れて帰りたいなと心奪われるネコがたくさんいるので、そのときは陰でエサをやって、食べてるうちに「じゃあね。達者でね」と言ってそっと消えるんです。後ろ髪を引かれる思いで……。
林:一期一会ですね。いちばん心ひかれたネコちゃんは、どこの国のどんなネコですか。
岩合:うーん、難しいですね。でも2年ぶりに会ったネコが、覚えていてくれたということを何となく感じたりするときがあって、そういうネコにはほんとに心揺さぶられます。
(構成 本誌・直木詩帆)
※週刊朝日 2022年2月18日号