(週刊朝日2022年2月25日号より)
(週刊朝日2022年2月25日号より)

 橋本内閣は当初、村山内閣の退陣によって、住宅金融専門会社の経営問題、いわゆる「住専問題」の対応に追われた。というのも、大蔵省(現財務省)が主導してできた住専は、バブル経済の崩壊による地価暴落の影響を受けて、危機に陥っていた。国会は大混乱したけど、何とか住専救済の法案を通過させた。

 そして1997年4月、所得税減税の財源を確保するため、消費税が3%から5%に引き上げられた。その結果、橋本内閣では非常に経済が悪くなった。野党からは「大幅の恒久減税をやるべきだ」と突き上げられた。

 橋本はそんな中、「税制改革」をやると打ち出した。すぐに、参院選が迫った98年7月、テレビ朝日系「サンデープロジェクト」の特別番組で「党首討論」を生中継で放送した。

 そこで僕は「あなたは税制改革と言ったけれども、当然『減税』ですよね、その場合、財源は一体どうするのか」と質問をぶつけた。そうしたら橋本は「私は税制改革をやると言っている。『恒久減税』をやるとは言っていない」というような答えだった。

 だけど税制改革は、増税か、減税かのどちらかしかない。だから、「まさか増税じゃないでしょう? だったら減税に決まっているじゃないか」と問い詰めた。要するに、増税するのか減税するのか、減税とはっきり言いなさい、と迫ったのね。

「私は税制改革をやると言っている」と繰り返す橋本。それでも、こちらは減税について何度も聞いたの。すると、橋本はしだいに声を落とした。そこで僕は、番組スタッフに橋本の表情をずっと撮り続けるように合図した。もうね、橋本の表情がはっきりと困惑し、うろたえている表情となっていた。そんなシーンがしばらく続いた。

◆どぎまぎの橋龍TVの恐ろしさ

 ここがテレビの面白いところでもあり、怖いところだね。新聞などの活字メディアだとね、「税制改革をします」との発言を書いて終わりだけど、橋本の顔をとらえ続けた生中継の映像は、困惑してどぎまぎしている様子をはっきりと伝えていた。

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