
■「われ椎茸」の理念
同社の21年「人気商品ランキング」を見ると、菓子部門の頂点で「不揃(ふぞろ)いバウム」が存在感を放っている。00年にバナナバウムとして発売し、17年冬に検品基準を見直し「不揃いバウム」としてリニューアルした。同社食品部の鈴木美智子さんは言う。
「以前は、一番端の部分が焦げたり、形が悪かったりしていたので、切り落としていましたが、パートナー企業さんの努力できれいに端まで焼けるようになりました。それでも若干、端が丸くなるので、検品時にはじいていた焼きムラや凸凹などを良品とする新基準を設け、不揃いバウムとしました」
ロスの削減により、製造効率もアップした。商品価格も180円から150円と買いやすくなった。もともと同社のアイドル的存在だったバウムシリーズだが、リニューアル後はさらに人気が上昇したという。
バウムのほかにも、チョコがけいちごやチーズケーキ、スコーンなど様々な「不揃いシリーズ」を手がける無印良品。その根っこには、同社が商品開発で大切にしている「われ椎茸(しいたけ)」の考え方があるという。

1980年の創業時、無印良品では干し椎茸を販売していた。椎茸といえば、傘の巻き込みが強いどんこが「良品」とされがちだが、出汁をとるのに形は関係ない。そう考え、割れたものやふぞろいのものも一緒に商品化した。
「きれいなものだけを選別するという工程も削減でき、割れたものを生かしたことで価格を下げることもできました」
と鈴木さんは説明し、こう続ける。
「当時は今で言う食品ロスを意識したわけではなく、椎茸は割れていてもおいしい出汁がとれる。ものの本質は見た目ではありません」
(編集部・福井しほ)
※AERA 2022年2月21日号より抜粋