内戦が激化している地域では、国軍はその実態が漏れないために国軍系通信会社マイテルだけしか接続できない状態にしようとする。マイテルは国軍総司令官ミンアウンフラインの家族が経営にかかわっているといわれる会社だ。国軍に対抗する勢力は、マイテルの通信塔の破壊をつづけている。ミャンマー各地で起きている戦闘は、SNSをめぐるせめぎあいという側面すらもっている。
ミャンマーでは、これまでも何回か、大きな民主化運動があり、多くの犠牲者を出している。その運動と今回の抗議行動の違いは国民がSNSというツールを手にしたことだといわれる。
2月1日、国軍に抗議する日本在住のミャンマー人が外務省前に集まった。彼らが支持するのは、国軍に対抗する国民統一政府(NUG)である。しかし閣僚の多くはいまどこにいるのかわからない。リモートで会議が行われ、SNSを通して声明が出される。銃とSNSの闘いは、さまざまなステージで起きている。
■下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(毎週)、「たそがれ色のオデッセイ」(週)、「沖縄の離島旅」(毎月)、「タビノート」(毎月)。