ここ数年、地方大学への注目が高まりつつある。新型コロナウイルスの影響が長引き、学生たちの間に都市部の大学を避ける傾向があるのも一因だ。地域への理解を深める授業や学外活動など、そこでしか学べないプログラムが設けられていることも多い。地方で学ぶ魅力を探ってみた。
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公立鳥取環境大(鳥取市)は全国でも数少ない、環境に特化した大学だ。
「環境学部環境学科」のほか、環境保全について経営的な視点からも学べるよう「経営学部経営学科」を設ける。定員はそれぞれ150人。地元の商工業者や農林水産業者らと連携し、演習形式の授業に力を入れる。
昨年、環境学部では県内の菌興椎茸(きんこうしいたけ)協同組合と、しいたけの栽培に使われる発泡スチロールを、自然分解される他の素材に代用し、ゴミを減らす課題に取り組んだ。入試広報課の大坪宗臣課長代理は「地域の方に現場見学をお願いすると『いつでもどうぞ』と言ってもらえるような近い距離感です」と話す。
学外での学びを促すため、交通費も助成する。入学時に2万円を払うと、4年間、鳥取駅から大学までのバス乗車が無料に。土日祝日や長期休暇中は、日本交通が運行する県東部地区のすべての路線に乗車できる。
座学の講義では、地元の企業人を招き、現場目線で環境の話を聞く機会も積極的に取り入れている。昨年、経営学部で始まった特別講座では、鳥取銀行や鳥取信用金庫の職員らが教壇に立った。
「地方の金融機関では今、『持続可能なビジネス』という視点が意識されている。私募債を発行して受け取る手数料の一部を環境活動に寄付する取り組みなどの話を通じ、環境に配慮した経営のあり方を学んでもらいたい」と大坪さんは言う。
山口大(山口市)は人文学部、理学部、共同獣医学部など九つの学部を持ち、大学院と合わせると1万人以上が在籍する国立大学だ。同大を象徴する学生支援事業が、1996年に始まった「おもしろプロジェクト」。テーマを問わず学生が「やってみたい」と考える企画を提案し、採択されると、一つの企画につき最大50万円まで大学が資金を援助する。