イラスト/小迎裕美子(AERA 2月28日号から)
イラスト/小迎裕美子(AERA 2月28日号から)

 きょうだい2人と両親、そして女性がそれぞれつなぎ、おしゃべりする。だが、女性の画面が小さくなるや否や、両親は、

「いなくなった!」

 と慌てだし、その度に会話は中断する。女性は言う。

「話している人の画面が大きく表示される『発言者ビュー』を設定しているようです。ギャラリービューを提案しましたが、私の顔がよく見えなくなるから嫌だと断られました」

 両親の「娘大好き度」は日に日に高まり、その様子に戸惑いを隠せないでいる。「お父さん、お母さん、どうしちゃったの……」と両親の老いを感じるようになった。親の心子知らずならぬ、子の心親知らずだ。

 苦手だった父親をコロナ禍で意図せず好きになったという人もいる。

イラスト/小迎裕美子(AERA 2月28日号から)
イラスト/小迎裕美子(AERA 2月28日号から)

■独特の会話口調がツボ

 神奈川県に住む桃子さん(44)は無口で頑固な父親(75)とは気が合わないと思っていたが、凝り固まった父親像が一変した。

「家族のグループLINEでは母親としか会話していませんでしたが、帰省もできないし父親宛てのメッセージも送るようになりました。父親からもぽつぽつLINEがくるようになったのですが、それがなんだかかわいくて」

 変換が面倒なのか、最初の頃はすべてひらがな。少しずつ文章量が増え、漢字も交じるようになったが、独特の会話口調がツボに入った。桃子さんが羊羹を贈ったときには、

<モー、オトーの大好物ありがとう。毎日甘い>

 のメッセージが届いた。

「実家では桃と呼ばれていましたが、LINEでは『モー』です。父を可愛いなと思うようになって、だんだん話したくもなってきて。最近は電話をしたときに父親が出ても、以前のように『お母さんいる?』とすぐ言わずに、父とも会話するようになりました」

AERA 2月28日号から
AERA 2月28日号から

 親の変化に戸惑う子どもがいる一方で、子の過干渉に気疲れする親もいる。

「子どもの優しさをむげにしたくないという親心から、断れないという声もよく聞きます」

 そう説明するのは、オヤノコトネット代表の大澤尚宏さんだ。コロナ前からそう感じていたが、この2年で親を心配する子からの相談がさらに増えたと感じている。

■急いで距離を縮めない

「会えない間に親の身体機能や認知機能が悪い方向に振れるのではという不安が増大しているようです。頻繁に会えなくなったことはもちろん、いつまで続くかわからないコロナ禍も、その背景にあるのではないでしょうか」(大澤さん)

 老人ホームへの入居から、同居の相談まで。親の性格や状況を仔細に記したメールが届くこともある。

 大澤さんが続ける。

「ですが、家を離れて数十年も経てば、親も子も別人格になっています。些細なことでハリネズミ状態になって、ぶつかりやすいのも親子だからです」

 うまく付き合うには、急いで距離を縮めすぎないこと。互いに生活があり、それぞれの時間が流れてきたことを理解することが肝要だ。

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