Yさんが続ける。

「江戸後期・1837(天保8)年に起きた大塩平八郎の乱の時には、あまたの豪商が焼き打ち、略奪の標的になる中、大塩は『大丸は義商なり。犯すなかれ』と配下に命じて無事だったのは有名なエピソードです。また四条にしては比較的お安い価格で食事や飲み物を提供してきたのも、京都人に愛されてきた理由やないでしょうか」

 ファミリー食堂には、小3の男児、夫妻、祖母、3世代4人で来店した家族もいた。京都市西京区に住む小原秀雄さん(41歳)一家だ。

「今日は祖母が『どうしても!』と言いはるので、みんなで来ました。僕は3人兄弟の末っ子なんやけど、クリーニング店を経営して忙しかった両親に代わり、今は亡き祖父母がよう連れてきてくれはった思い出の場所。2年前に亡くなった父は晩年、母とコーヒーを飲むのを楽しみにしてましたなぁ。ウチは4世代やけど、110年もの歴史があるなら当然、5世代、もしかしたら6世代の常連さんがいはるかもしれまへん。はぁ、大食堂を残してくれはったらええのに」(小原さん)

 ファミリー食堂の閉店は、老朽化によるフロア改築の一環。持ち株会社のJ・フロントリテイリングによると、「来年春には新しくレストランフロアを再開予定ですが、大食堂については未定」という。

 最後になるが、記者が味わったのは、迷いに迷ったが「大人のお子様ランチ」だった。

 まずはエビフライを横へやり、ケチャップライスと上に乗ったトロトロの半熟卵を一緒にすくい口の中へ! 専門店のような上品さとはちょっと違う、母親が作ってくれたような懐かしい味だ。

 続いて、デミグラソースとともにハンバーグを。こちらはミンチとつなぎのバランスが良く、箸が止まらない止まらない。そして、満を持してエビフライへ。揚げたてで熱さが残る。ホクホクとした感触と歯ごたえ。35分、並んだかいがあった。

 来年春、ファミリー食堂の再開を願いつつ。

(高鍬真之)

※週刊朝日オンライン限定記事

暮らしとモノ班 for promotion
なかなか始められない”英語”学習。まずは形から入るのもアリ!?