■機能しない就学支援新制度
前出の飛田弁護士によると、「虐待されて保護者から逃げてきた大学生がご飯も食べられないくらい困窮していても生活保護を受けられないという現状を知る人は少ない」と言い、実態は正確に把握されていないものの、「そんな大学生が毎年、全国で100人くらいはいるのではないか」と指摘する。
「この問題を訴えると、『就学支援新制度があるじゃないか』と、言われることがあります。実情がまったく理解されていない。この枠組みで支援金を受け取るまでの道のりは、ものすごく大変なんです」(飛田弁護士)
実際、就学支援新制度のリーフレットをみると、冒頭には「重要なお知らせ『必ず、保護者の方に渡してください』」とある。保護者から虐待されている子どもがこの文言を目にした瞬間、絶望的な気持ちになるのではないだろうか。
さらに受給資格の確認作業を行うため、親権者全員のマイナンバーの提出が必要で、それが申請のハードルを上げている。
一応、リーフレットの隅には「DVなどの理由により、親権者との接触が困難な場合、まず学校などにご相談ください」ともあるが、はたしてこのような面倒な相談に対して学校は適切な道筋を示してくれるのか、疑問符がつく。
今後の課題もある。虐待によって困窮に陥った大学生と、新たな制度をどう結びつけるか、だ。
「行政としては幅広く市民の方にこの制度を知っていただきたい。4月以降、いろいろな機会を利用してPRしていかなければいけないと思っています」(高場センター長)
横須賀市の新制度がうまく回れば、他の自治体が続く可能性もある。虐待されて困窮している大学生にとっては大きな救いとなるかもしれない。
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)