今年の3年生はコロナ禍で課外活動の制限が危惧されたが、「結果的には影響なかった」と高橋正忠・進路部長は話す。
「3人は模擬国連やディベートコンテストなど、オンラインで代替可能なところで実績を作っていました」
合格者を毎年出しているからこその細やかな対策も生きた。前年度の合格者の担任と今年度の担任が早い段階から、提出書類などで何が必要かを共有しているという。
「東大推薦を受ける生徒の担任は、かなりの労力が必要になります。推薦書など書類の作成は、特に文系学部は膨大な量。毎年、初めての担当教員が一からやりますというのは大変なので、つないでいくようにしました」
さらに、卒業生にサポートを頼むこともある。
「志望学部に合格した先輩がいれば呼んできて、実際に面接の雰囲気や待ち時間はどう過ごしたかといった細かいところまで伝えてもらっています」(高橋さん)
もちろん、こうしたノウハウも重要だが、合格するには「実績」もいる。学校側は推薦合格を目指す生徒向けにガイダンスを開いたり、コンテストなどの告知ポスターを目につくような場所に貼ったり、サポート態勢を整えている。とはいえ、「あくまで生徒の自主性を重んじている」と高橋さんは強調する。
「進学校ではどうしても学力という物差しが強く働いてしまいます。学外に出て学力以外の物差しで評価されてみることも大事だと思っています」
渋谷教育学園渋谷では、部活動の顧問がつかないとコンテストに出られないということはなく、生徒たちが「どんどん勝手に」自主的にエントリーするという。
合格者の活動で注目したいのは「模擬国連」。同校の部活動の一つで、生徒それぞれが国の大使となり、実際の国連会議を想定して世界の諸問題について議論や交渉をする。
「社会的な問題を『自分事』として考えようとするタイプの子が多い。推薦入試は将来何がやりたいかというビジョン、そしてそのビジョンを支える高校時代の活動が結びつくことで説得力が出てくると思います。社会に対する問題意識があり、その問題を大学で学び、解決策を実現したい。模擬国連はその筋道を考えられますし、推薦入試に対する強みになっているかもしれません」