ロシア─ウクライナ間は、競技者同士の交流も深い。ソチ五輪ペア金メダリストのタチアナ・ボロソジャルは、ウクライナ出身のロシア選手。メダル獲得時のパートナーと結婚して2児の母となったが、インスタグラム上で「そこには私の親族がたくさんいます。こんな状況の中で、真実はたった1つ。平和は素晴らしく、戦争は悪」と、心情を綴った。
北京五輪で団体戦にも出場した女子のアナスタシア・シャボトワは、2019年に生国のロシアからウクライナへと移籍した。いち早くウクライナに同調したジョージアのトップ選手、モリシ・クビテラシビリは、エテリ・トゥトベリーゼ門下で、現在もモスクワを拠点に練習している。
「スポーツと政治は切り離すべきである」という論もある。2日、2006年トリノ五輪金メダリストのエフゲニー・プルシェンコ氏は、自らのインスタグラムでコメントを発した。「アスリートを罰したり、競技を行う彼らの権利を奪ってはならない。これは差別であり、アスリートの権利の重大な侵害だ」「ロシアの強力なアスリートが国際大会に参加しなければ、その勝利の価値は下がる」と、ロシア選手の排除に疑念を呈している。
しかし、今回の侵攻は「五輪期間の休戦協定」を無視した行いであり、ある意味ではスポーツの聖域を犯してしまったと言える。永世中立国スイスさえもが対ロシア制裁を適用している現状、スポーツのみが例外的に制裁を逃れるという事は難しい。
一方、2020年の世界選手権は、コロナ禍で中止となっている。またしても世界選手権の通常開催が見込めないとなれば、ここまで鍛錬を積んできた選手の努力が、あまりにも報われない。(菱守葵)
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