その内側にダイビングしたい勇気ある人がいらっしゃるならば、太陽のような星の質量程度のブラックホールではなく、それよりはるかに大きな超巨大ブラックホールを選ばれることをお勧めします。
といっても一旦ブラックホールの内側に入ってしまうと、もはや元の世界に戻ることはできません。それどころか外界とは完全に隔絶されますし、外側の人にとっては、内側に入った人は死んだも同然です。したがって、個人的には、ブラックホールの中に入ることは避けたほうがいいと思います。
■私たちはすでにブラックホールの中にいる?
最後に一つ面白いことを付け加えておきましょう。実は我々はある意味では、すでにブラックホールの中に住んでいると解釈することもできるのです。
どのような領域であれ、その質量に対して決まるシュバルツシルト半径よりも外側にいる観測者にとっては、その内側の領域はブラックホールのように見えます。ブラックホールは決して高密度である必要はありません。例えば現在の宇宙の密度から計算すれば、我々から約100億光年以上離れた観測者から見るとその内部はあたかもブラックホールに対応する領域となってしまいます。
我々から138億光年以上離れた場所は観測できず、宇宙の地平線(私たちに光が届くギリギリの場所)の先にあります。その先には何もないのではなく、観測できないだけで我々と同じような宇宙がずっと広がっているはずです。逆に言えば、138億光年以上離れた観測者にとっては、我々は見えません。まさにこれはブラックホールと同じ状況です。
ただし大きさが変化しない通常のブラックホールの場合とは異なり、この解釈に対応する我々が住むブラックホール領域の半径は宇宙の年齢に比例して大きくなります。
というわけで、ブラックホールにはいろいろな可能性があるものの、必ずしも想像を超えた危険なものではなく、我々に馴染み深い風景が広がっているとしても不思議ではありません。