TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽とともに社会を語る、本誌連載「RADIO PA PA」。俳優・山崎一さんについて。
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俳優山崎一との付き合いは何年になるのだろう。
僕の作家デビュー作『アタシはジュース』(サトウトシキ監督)映画化以来だから、もう25年以上になる。彼の舞台は必ず観ているし、ラジオドラマでも欠かすことのできない存在だ。共通の友人も多く、読売演劇大賞最優秀男優賞受賞の際は、ラジオ局のスタッフみんなでおめでとうと喜んだ。
目白にあるシアター風姿花伝で芝居を観た帰り、居酒屋に繰り出した。
酒の飲めない彼はウーロン茶を頼みつつ、「こんど劇壇をたちあげるんだ」と言った。普通のプロデュース公演ではゲスト扱いでもう一歩踏み込めない、固定メンバーの劇団には人間関係の煩わしさがある。もっと柔らかく、キャストもスタッフも能動的に芝居ができる集まりを考えて、「『場所』の意味の『壇』を、そこに『ガルバ』を加えて『劇壇ガルバ』。そんな名前のユニットを作る。『ガルバ』ってインド神話に出てくる創造神、宇宙の卵『ヒラニヤガルバ』からとったんだ」
中野の居酒屋を舞台に山崎一劇場第二幕が始まった感じがし、祝杯をあげた。
劇壇ガルバは前進を続け、このほど第3回公演を吉祥寺シアターで観た。
演目はアーサー・ミラーの「THE PRICE(ザ・プライス)」。
ラジオ脚本家からスタートしたアーサー・ミラーの作品は、家族の物語=ホームドラマの味わいだった。ペーソスや懐かしさ、家族ならではのもどかしさもあり、客は自分の家庭に置き換え、ふんふんと頷いていた。
家の事情で大学進学を諦め、警官になったヴィクター(堀文明)とエスター(高田聖子)夫婦が、亡くなった父の家具を処分するため鑑定士ソロモン(山崎一)を呼ぶ。八十九歳のソロモンがユダヤ人の設定は原作者アーサー・ミラーを彷彿させた。