一方、自分の会社は結婚や妊娠・出産退職が当たり前。それで、育児・介護休職制度を導入しようと運動を始めたんです。
ただ、男性組合役員からは「女性の幸せは良き妻、良き母になること」と言われてしまって。1年目は要求項目にも入りませんでした。次の1年で制度導入を求める声を組合員から集め、男性組合役員から反対が出ないよう説得し、次の年に要求項目に入れてもらったんです。すると経営者から即OKが出ました。組合の壁より、会社の壁のほうが低かった(笑)。
あの時の悔しさがあったから、今の私があります。男社会をぶっ壊すのも、この時から始まったのかもしれません。
──神津里季生前会長の後任選びは難航しました。JAM(芳野会長の出身である金属・機械系労組などでつくる産業別組織)の安河内賢弘会長から昨年夏に会長立候補の説得を受けたそうですね。
最初は「役員推せん委員会で次期会長候補にあなたの名前が出ている」といった程度の話でした。正式に話が来た時、断ったら連合は大変なことになる、という思いはたしかにありました。
ただ私は、学習会などに呼ばれて後輩たちに話をする時は、いつも「チャンスを逃さないで。お願いされたら『NO』と言ってはダメ」とハッパをかけてたんです。そんな私が会長職を断ったら、後輩から信頼を失ってしまう。何より、これまで多くの女性の先輩が、組織の都合で泣く泣く労働界を去っていく姿を見てきた。私が率先して「ガラスの天井」を打ち破る。そう思って引き受けようと決めました。
──今夏には参院選がありますが、連合は支援政党を明示しませんでした。
支援政党を明示しなかったことは、過去にもありました。今回は、連合内で基本方針を作る段階で、立憲の衆院選の総括がどうなるかわからなかった。国民民主党も都民ファーストの会との連携を模索していて、両党とも今後の方針が揺れ動いている状況でした。
いずれにしろ、参院選は政党よりも個人名のほうが重要。「人物重視・候補者本位」で臨んでいこうと考えています。