昨年10月、女性として初めて連合のトップに就任した芳野友子会長(56)。48の産業別組織と700万人の組合員を束ね、大票田の行方を左右する今夏の参院選のキーパーソンだ。その人は今、何を考えているのか。
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──昨年10月の衆院選挙で、立憲民主党は14議席減の結果となりました。
敗因の一つは、いわゆる「野党共闘」だと思います。選挙中に立憲の候補者が共産党の議員と一緒に並んで演説する、あるいは「比例は共産党へ」と書かれた公選はがきが組合員の自宅に届く。連合の場合は、組合員の票の行き場がなくなりました。
──今では存在しない「民主党」と書かれた票が362万票ありました。
その気持ちはわかります。また、市民連合も様々あり、地域によっては連携していますが、昨年の選挙では前面に出すぎたのではないでしょうか。
──芳野会長はミシンメーカーの東京重機工業(現・JUKI)で組合活動を始めていますが、そこでも共産系の組合と対立があったのですか。
ありましたね。会社の裏門で宣伝車で演説し、ビラをまく。時限ストライキもしていました。
何の話し合いもなくストをするので、工場から一部の人がいなくなる。でも、その日の工数は決まっている。従業員たちで手分けして、仕事を穴埋めするわけです。話し合いで解決できることはあるのに、何でそれをしないのかなと。
──同じ労働運動でも共産系とはまったく違う?
私たちは何でも必ず組合員と話し合い、機関会議を経て決定します。一方、共産系の労働組合では、いつの間にか決まる。生産性向上や会社の提案にも、協力的ではありませんでした。そこで、建設的な労使関係を築き、民主的な労働運動をしようと分裂してできたのがJUKI労組です。
──高校卒業後にJUKIに就職して、わずか1年で、組合活動に参加することになりました。それから労働運動一筋です。
1985年に組合の専従になって、88年にJUKIの中央執行委員に就任したのですが、この頃すでにNTTでは育児休業制度が整っていることを知りました。NTTでは当時、24時間365日態勢で番号案内や電報の手配などをしている女性社員がたくさんいて、制度の導入が早かった。