「自分(プーチン氏)はロシアの子どもたちを守る母なるロシアに仕える役目を負っており、国境の外側にいる子どもたちも、守らなければならない」
だがウクライナの多くの人々から見れば「勝手に子ども扱いしないでくれ」「あなたを母親と思ったことはない」ということになるだろう。
特にクリミア占領以降は、ウクライナでの反ロシア感情は引き返せないところまで強まっている。ウクライナのロシア離れは、プーチン氏による自業自得と言えよう。
■世界観は帝政ロシア
かつて大ロシア(ロシア)、小ロシア(ウクライナ)、白ロシア(ベラルーシ)と呼ばれた東スラブ3カ国は同根の民族であり、離ればなれなのは不自然な状態だという感覚自体は、ロシアでも多くの人々に共有されている。「兄弟国」という表現もしばしば使われる。
だが、全面的な戦争に訴える今回のプーチン氏のやり方は常軌を逸しており、プーチン氏を支持してきた人々も、心の底では違和感をぬぐえないのではないだろうか。
ロシアがスラブ世界の盟主だというプーチン氏の世界観の源流は、帝政ロシアにさかのぼることができる。一方で、近隣国を勢力圏にとどめ置くためには武力行使をためらわないという手法は、ソ連を思わせるものだ。(朝日新聞論説委員(元モスクワ支局長)・駒木明義)
※AERA 2022年3月21日号より抜粋