各所で無料PCR検査の会場が設置されている。まだまだ油断はできない(写真と本文は関係ありません)
各所で無料PCR検査の会場が設置されている。まだまだ油断はできない(写真と本文は関係ありません)

 新型コロナの新規感染者数に減少傾向が見られるものの、依然として多数の感染者が報告されている。長引く感染状況を受けて、各地で無料のPCR検査の実施を延長する動きもある。もちろん、無料PCRを受けるほとんどの人が自身の体調を心配しての検査だが、なかには「保険金目当て」なる人もいるという。当事者から、その動機について話を聞いた。

【写真】各地に設置された無料PCR検査会場での行列

*  *  *

「特に症状があったわけではないですが、PCR検査は2回受けました」

 こう話すのは、東京都に住む30代の男性だ。症状があったわけでもなく、仕事で必要になったわけでもない。だが、今年1月と2月にPCR検査を受けている。

 お目当ては、新型コロナの「保険金」だ。

 男性は今年1月に、コロナ保険に加入した。保険料は年間わずか2千円で、PCR検査でコロナに感染して「陽性」となれば、5万円を保険会社から受け取ることができる。この保険に注目した背景には、オミクロン株はこれまでと比較して感染する確率は高まっているものの、「重症化しない」といわれていることもあった。

■保険金もらえたらラッキー

 検査はいずれも、駅前で実施されていた無料のPCR検査を受けた。受け付けから検査まで20分とかからず、手軽に受けることができたという。

「結局まだ陽性になっていませんので保険を受け取れていませんが、時間ができればまたPCR検査を受けたいと思っています。コロナのせいで友だちと会えなくなり、ボーナスも減らされたので、その分、5万円もらえたらラッキーだなと思っています」

 男性はそう言う。

 保険料の少なさ、重症化リスクの低さ、保険金の多さを天秤にかけて、「無症状で保険金だけもらえたらラッキー」、そんな意識があるようだ。

 ある20代の女性は今年1月、3カ月500円のコロナ保険に入った。こちらもコロナの陽性になれば5万円をもらうことができる。彼女はこう説明する。

「はっきり言ってお得ですね。一人暮らしなので家族にうつすリスクもないですし、リモートワークもできる。さすがにコロナ後遺症とかは怖いですけど、無症状も多い。ワクチンも3回打ったし若いですから、大丈夫なんじゃないかなと。友だち同士でも『お得な保険がある』と興味津々でした」

 SNSでも「コロナになったら保険金が入るからコロナになりたい」「コロナにかかったら、40万以上もらえるから検査を受けてきた」などという声も上がっている。

著者プロフィールを見る
吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

吉崎洋夫の記事一覧はこちら
次のページ
「わざとかかる人がいるのでは…」の声も