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 新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけを、結核やSARSなど「2類相当」から、季節性インフルエンザと同レベルの「5類」に引き下げる議論が浮上している。だが、患者を救うためには、類型の見直しよりも、するべきことがあるという。AERA 2022年3月21日号で、岡田晴恵・白鴎大学教授が語る。

【岡田晴恵さん監修】自宅療養への備えはこれで万全!完全チェックリスト

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 一般的にコロナウイルスは、変異がドラスティックで先が読み難い怖さを秘めています。オミクロン株(BA.1)は上気道が主でしたが、ステルスオミクロン(BA.2)は、また肺で増えやすくなっている。オミクロンが最後の変異株ではないでしょう。今後の変異株が病原性も強くなるか弱くなるか、わからない。安直に2類、5類と分けて対応できる問題ではありません。 

 季節性インフルエンザも1990年代には致死率約1%で、年間に万単位で人が亡くなっていました。65歳以上のワクチンが定期接種となり、検査キットの普及、タミフルが開発され、ワクチンによる重症化阻止と早期検査、薬の投与開始が出来て、致死率が10分の1に下がった。 

 患者を救うには、速やかに検査で確定診断をつけて、早期に治療を始める、それが感染症の原則です。PCR検査は欧米並みに1日100万件の実施能力を持つ、陽性者の隔離・保護を徹底すれば、人の流れを制限するよりも経済もよく回る。抗原検査キットはメーカーに十分な量を発注し、余った分は国が買い上げる。そのうえで治療薬を十分に確保し、ワクチン接種は粛々と進める。そして大規模集約医療施設を作って医療提供体制を整えるのです。 

 そういうものを恒常的に用意して、いざというとき稼働させる。グローバル化した社会のパンデミック対策の基本です。いずれにしても、対策は「最悪を想定」して立てなくてはなりません。著書の『秘闘』にも書いた通り、残念ながらここまで専門家の甘いリスク評価で失敗してきたのは事実ですから。 

AERA 2022年3月21日号