「圭くんといえば、もう一人のケイくんがいるじゃないですか。(略)彼なんかは家柄も学歴も勤め先も申し分なく、理想的なお相手ですよね。昔はああいう方たちが皇族の周りにはたくさんいたんでしょうけど」(「文藝春秋」2021年4月号)
歴史学者・小田部雄次さんとの対談での言葉だ。「李王家の縁談」という小説の連載終了に合わせたもので、皇族の結婚がメインテーマ。眞子さんと圭さんにも話が及んでの言葉だ。
守谷さんの父は元通産官僚、母は元NPO法人の理事。慶應大学を卒業し、祖父が役員をしていた日本郵船へ。確かに立派な家柄、学歴、勤め先だ。
圭さんは国際基督教大学(ICU)を卒業している。偏差値の高い有名大学だ。都市銀行を経て法律事務所のパラリーガルとなり、ニューヨークでも同じ職を得た。が、評価されない。
金銭トラブル+結婚一時金=反発。その構図ができてしまった。圭さん(と眞子さん)のトラブルへの対処法が共感をよべず「400万円を返さないのに1億円以上を手に入れる人」が圭さんのデフォルトとなった。
こうなると、「ICU=学習院じゃない」で、「パラリーガル=弁護士じゃない」となる。もろもろ合わせて「皇室にふさわしくない」が常識となった。眞子さんが一時金を辞退した今も、圭さんの「じゃない人」は残ったまま。だから2人はいつまでも「書いていい人」、つまり「叩いてよし」の枠に入っている。
そして、この「じゃない」は圭さんに限った概念ではなく、時代のキーワードだと思う。そう確信したのは今年1月、あるサイトで岡田晴恵さんの著書『秘闘』を書評したのがきっかけだった。記事へのコメントに「この人は医師じゃないですよね」とあった。
確かに岡田さんは医学博士号は取得しているが、医師ではない。国立感染症研究所にいたが、今はいない(白鴎大学教授だ)。ある時から彼女が受けたバッシングは「じゃない」から。「じゃない人」は叩いてよし。圭さんと同じ構図と理解した。(コラムニスト・矢部万紀子)
※AERA 2022年8月8日号より抜粋
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