──「和歌山編」の終盤では、娘さんの手引きで、別れた妻に再会します。言葉は少なくても、坂本の感情があふれる様子がよくわかりました。

近藤:元妻とは学生時代からの付き合いで、夫婦として一緒にいたときは仲良くしていたこともあったけれど、何をどう会話していいかわからない。そこは、複雑な思いがあったでしょうからね。

──坂本は独身のままですが、近藤さんご自身は昨年1月に再婚されたんですよね。

近藤:バツイチの坂本と自分自身の境遇がそれまで同じだったので、重ね合わせて、去来するものはありましたね。

──ところで、今作は「YouTubeドラマ」というかたちをとっています。テレビドラマとは違うものですか?

馬杉:テレビドラマはなるべく数多くの人に見てもらって、その中からコアなファンが生まれてきますが、YouTubeは最初からコアな層に届けて、その人たちがSNSでつぶやいてくれたりして、ファンが増えていきます。

 今作も最初に意識した視聴者は、自分が顔を思い浮かべられるような身近な人たち。たとえば、僕が京都でよく行っていた中華屋さんは背骨が曲がったおじいちゃんが一人で経営していたんですが、コロナ禍で閉店してしまいました。今作は、そのおじいちゃんに届けるものにしたいという思いも着想の中にあったんです。真面目に働いている人でも困難に見舞われる難しい時代ですが、「おやじキャンプ飯」を見ることが、ちょっとでも上を向ける助けになってほしいと思っています。

(本誌・村上新太郎)

週刊朝日  2022年3月25日号