江口:いないです。
林:いなさそうですよね、いまのお話を聞くと(笑)。成功してよかったですね。お芝居というものに出会わなかったら、いまは無気力な人間になってたかもしれない(笑)。
江口:私もそう思います。もし芝居をやってなかったら、ちゃんとした仕事してないと思う。
林:いまごろ故郷で小さいお店やって「昔、女優を志してたんだ」なんて言ってたかも。
江口:いや、店もできないと思いますよ。どこか住み込みで働いてるんじゃないですか(笑)。
林:これから、この監督さんにこんな感じに撮ってもらいたいな、というのはあります?
江口:そんなのもあんまりないですね。このホン(脚本)でこの役でこんなふうにしたい、というのはほとんどないんですよね。
林:自分がプロデュースして何かやってみようとかは?
江口:まったくないです。私は永遠に使われる身でいたいです。自分で何かを企画するなんてこと、これっぽっちも考えてないし、イヤですね、それは。
林:でも、恋愛ドラマのときに、台本もらって「ケッ。こんなこと言うのか」って内心思ったりすることありません?
江口:そんなん、いつも思ってます(笑)。「なんじゃこれ」と思いながらやってます。だいたい、そばにいる旦那さんや恋人に対して「あなた」って呼ぶこと自体、私にとってはものすごく苦手なことなんですよ。だから、そこはもう楽しむしかないです。
林:江口さんが出てきたとき、男の人が「すごく色気がある」って書いてたけど、私もそう思う。
江口:へ~え。
林:いまもそうですよ。華やかな人が振りまく色気とはまったく違うネトッとしたこの色気って、何なんだろうと思う。自分では心当たりないですか。
江口:ないですねえ。
林:ということは演技力なんだ、あの色気は。
江口:いやあ……。目が一重だからじゃないですか(笑)。
林:その目がいいですよ。ところで、若い俳優さんって、たとえばお芝居で「ロミオとジュリエット」のバルコニーの場面を3カ月やると、本当に恋人になっちゃうみたいですね。