就職活動の時期になると思い出すことがあります。私は新卒で三菱商事に入りましたが、幸運にもほかにも内定をいただいていました。
ある製鉄会社におそるおそる内定の辞退を伝えに行ったところ、人事部の方に「世界のどこかでいつか一緒に仕事をすることがあるかもしれない。グッドラック」と快く見送ってくれました。てっきり怒られると思っていましたから、印象深い出来事として心に残っていました。
商社時代は食肉部門が長かったので、実際にその企業と仕事をすることはありませんでした。
ですが、社長秘書を務めた40代のころ、首相の外遊に同行する機会があったんです。右も左も分からず、どうしようと思っていたところ、その製鉄会社の方に助けていただきました。
同じ人ではなかったのですが、やはり温かい心で迎えてくださいました。企業文化とは、そういったところにも受け継がれていく。人は違えど、「偶然の出会い」が紡いだ縁だと感じています。