そんな彼女たちが女装に対して口を揃えて投げかけてくる言葉があります。「品がある」。私も100万回以上言われてきました。「さすが高学歴。皆さん品がある。だから好き」とな。要するに「オカマなんかを好きになる自分」を正当化するための呪文なのです。「品がある」の前には確実に「オカマなのに」が含まれているのを、私たちはちゃんと理解しています。裏を返せば、「そもそもオカマは下品」という大前提があっての「品がある」なわけです。
「品があるから好き」な彼女たち自身は、いったいどれほど上品でいらっしゃるのでしょうか。無論、女装はお客に上品さなど求めていませんが。むしろ「(オカマのくせに)品があるから好き」などと浅はかかつ厚かましい台詞を言ってしまえる人たちが大勢いる現実社会に、若干の絶望を覚えます。
なんて、偉そうなことを言いながらも、結局はそれで今日もおまんま頂いているのだから、節操無いのは私の方です。そして、私のような「無駄な学歴」に値打ちがある限り、日本の学歴社会はこれから先も続くと思います。
ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する
※週刊朝日 2022年4月1日号