ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「高学歴女装」について。
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「学歴社会はもう終わり!」なんて言葉を聞くようになって久しいですが、果たして本当にそうなのでしょうか? 私には育てる子供もいませんし、優秀な人材を雇うような立場でもないので、細々と女装させてもらえさえすれば、今後日本が非学歴社会になっていったとしても特に問題はありません。
ちなみに、私は学歴社会真っ只中の時代に生まれ育ち、他人様から見れば「立派」と思われるような学歴を歩ませてもらいました。すべて両親のお陰です。「立派」な学歴保持者の私からすると、日本は依然として「分かりやすい学歴にほだされる傾向」にある国だと思います。
先日、「トマホーク」という現役大学生ユーチューバーのチャンネルで、「高学歴女装大集合」的な企画をやらせて頂いたところ、女装コンテンツとしてはあまり見られないバズり方をしました。現在、日本の女装業界で活躍しているのは、私と同世代がほとんどなため、当然「高学歴」の人たちも少なくありません。それでもやはり世間からすれば「そんな大学まで出てどうして女装なんかに?」という驚きと食いつきが強いのは確かです。現に私がテレビに出るようになったきっかけのひとつが、まさにそれでした。慶応出ているのに女装。この何もかも無駄にしている響きに世間は食いついたのでしょうが、同時に「所詮は表面的な肩書だけで値打ちが決まってしまう」ことも身をもって知りました。
あれから10年以上が経ち、それでもまだ「高学歴女装」を面白がる人たちはごまんといる。むしろ増えているような気さえします。女装エンタメの客層、女装の動画を観てコメントをする層は、ほとんどが40代~60代の女性です。彼女たちにとって「高学歴」というのは、何かを愛でたり消費したりする上でかなり大事な「ときめき要素」なのかもしれません。ましてやそれが女装やオカマだった場合、ときめく言い訳として「高学歴」はかなり有効なファクターなのでしょう。つくづく薄っぺらい。