イラスト/ウノ・カマキリ
イラスト/ウノ・カマキリ

 そして、その2カ月後に戦争が始まり、イラクは打ちのめされ、フセイン氏など幹部は処刑された。

 北朝鮮はその事実を知って、懸命になって核開発を行ったのである。米国に戦争を仕掛けられないために、である。

 だから、北朝鮮の核・ミサイル実験に対して、米国などが大糾弾していることに、私は強い違和感を抱いていた。

 北朝鮮は、イラクのように米国に戦争をさせないために核・ミサイルの実験をしているのであって、米国と戦争をするつもりなどない。それに核大国の米国が、北朝鮮に核を廃棄せよというのは筋が通らない。私は、北朝鮮に同情的であった。

 だが、「火星17」は愚挙だと判断せざるを得ない。何より、4年前に金正恩氏は、初の米朝首脳会談を前に、ICBMの発射は自制すると宣言しているのである。

 なぜそれを破ってしまったのか。

 開発というのは、途中で止めるのが困難だということなのか。

 歴史を見れば、自衛から始まって侵略に至った例がたくさんある。日本も自ら、その悪例をやってしまっているのである。

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数

週刊朝日  2022年4月15日号

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