入念に下調べして熟慮を重ね、内容的には万全だ。なのに、肝心の伝える部分がうまくいかない──。そんな人に知ってほしい。「話し方」にはコツがある。ビジネスシーンで成果をあげるコツとは何か。AERA 2022年4月11日号は「話し方」特集。
* * *
必要な情報はそろえたのに、大切なことはすべて頭の中にはあるのに、思うように伝わらない。「話し方」で苦労した社会人は少なくないはずだ。
大手IT企業で人事を担当する30代男性もそうだ。情報をすべてそろえて提示しているつもりなのに、上司から「君の話はよくわからない」と指摘されることが度々あった。男性は言う。
「頑張るあまり空回りして、いつの間にか結論から遠いところで迷子になっていたと思います」
実は、話し方には、シンプルな仕組みがある。Zアカデミア学長で武蔵野大学アントレプレナーシップ学部長の伊藤羊一さんはこう断言する。
「ビジネスシーンでは、いかにコンパクトに話すかがカギです」
それがなかなか難しい。大切な案件ほど「丁寧に説明しなければ」と力が入り、しゃべり続けてしまう。逆に部下から熱くプレゼンされたが、何が言いたいのかよくわからないというケースもあるはずだ。
伊藤さんによると、最重視すべきは、自分の考えを一方的に伝えることではなく、相手を「動かす」こと。そのためには話は短ければ短いほどいいという。伊藤さんが目安とする時間は、ずばり「1分」だ。
■話の骨格は3段で
話し方は構造で決まる。「3段ピラミッド」で話の骨格を作るとわかりやすいという。
「話し言葉は、書き言葉とは違ってインタラクティブです。その機会を逃すと相手に刺さらなくなってしまう。だからこそ、話の要点をクリアにして、情報量をそぎ落とす必要があります」
1段めに「結論」、2段めに「根拠」、3段めに「例」をあてはめ、話の骨格を組み立てる。
「結論」から作る必要はない。3段めの「例えば」を付箋に書いて並べながら全体を考えるなど、やりやすい方法でOKだ。一通り埋めたら、ピラミッドのすべての線において意味が通じているかをチェックする。