ルバイヤット・ホセイン監督(Rubaiyat Hossain)/1981年、バングラデシュ・ダッカ生まれ。バングラデシュで数少ない女性監督の一人。2011年に「Meherjann」でデビュー
ルバイヤット・ホセイン監督(Rubaiyat Hossain)/1981年、バングラデシュ・ダッカ生まれ。バングラデシュで数少ない女性監督の一人。2011年に「Meherjann」でデビュー
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 コロナ禍でも世界ではたくさんの映画が制作されています。「ドライブ・マイ・カー」のような話題作ばかりではありませんが、きらりと光る作品があふれています。AERA本紙ではそんな良作を毎週1本ずつ、SDGsの観点から紹介する新連載を始めました。初回はバングラデシュの映画。AERA.dotでは監督のインタビューをロングバージョンでお届けします。

【映画「メイド・イン・バングラデシュ」の場面写真はこちら】

 世界の繊維産業を支えるバングラデシュ・ダッカ。多くの女性労働者が過酷な労働環境で働いている。23歳のシムが働く工場で火災が起き、同僚が亡くなった。「最悪な職場」「自分も死んでいたかも」と憤る同僚たち。主人公のシムは権利を勝ち取るため労働組合を立ち上げようとするが――。映画「メイド・イン・バングラデシュ」は、女性労働者たちの問題をヒューマンドラマとして描いた。バングラデシュで数少ない女性監督の一人であるルバイヤット・ホッセン監督に、その意図と現在の状況を聞いた。

――弱い立場にある女性労働者たちが、労働組合を立ち上げようと奮闘する物語です。このストーリーを語ろうとした、もっとも大きなきっかけは?

 私は自分をフェミニスト・フィルムメーカーだと定義づけしています。映画を作るときには実際に女性に起こった問題に焦点を当てて、主役を女性にして映画を撮ることを念頭に置いています。前作でバングラデシュの中流階級の女性に焦点を当てたので、今回は労働者階級にいる女性たちが実際にどんな生活を送っているかをみなさんに見ていただきたいと思ったのです。

――本作の背景には、2013年に起きたラナ・プラザビルの事故がありますよね。縫製工場がひしめき合う雑居ビルが崩壊し、1100人が亡くなり、2500人が負傷した痛ましい事故です。

 事故が起きたときは前作の脚本を書いているときで、すぐには取りかかれませんでした。しかし一瞬にして大勢が亡くなった重大さを痛感し、同時に私自身も、日々こうしたところで働いている女性たちがいるのだ、ということをあらためて認識したのです。

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