マキタ:4人います。長女が4月から大学3年で今年ハタチになりまして、次女が4月から高校1年で、4月から小学2年生になった双子の男の子がいるんです。七転八倒しながら、なんとか二人で育ててます。『雌伏三十年』の表紙は僕の顔のイラストにしたんですけど、これ、実は僕の長女が描いた絵なんですよ。
林:すごく上手じゃないですか。
マキタ:「俺が若かったころをイメージして描いて」と言って。
林:じゃあこの絵は、お父さんとお母さんが出会って、一緒に暮らし始めたころですね。山梨県人って、なかなか同棲なんかしないと思ってたけど。
マキタ:アハハハ、そんなことはないと思いますよ。
林:そう? そんなことするとお嫁に行けないし、みたいな、保守的な空気が私のころにはまだまだありましたよ。
マキタ:僕は授かり婚なんで、まともな結婚式も挙げることがなかったし、当時は僕も無法者というか、とんがってればとんがってるほどいい、みたいな荒くれた精神でいましたから。妻にも「これでいくぞ!」みたいなノリで。
林:カッコいいじゃないですか。
マキタ:でも、その勢いがもったのは1、2年で、あっという間に侵略されましたね(笑)。迷惑をかけてきたので頭が上がらないし、自分の中に罪の意識があったんです。仕事に恵まれ始めるまで10年ぐらいかかって、恩返しというほど大げさなものではないんですけど、「見とけよ。何とかしてその10年分おまえに返してやるぞ」みたいに思っていて。それで、仕事が上向きになってきた10年目に結婚式を挙げたんです。
林:まあ、ステキです。
マキタ:債務を返済したつもりで感謝の手紙を読んだら、妻が「これで終わったと思うなよ」って言ったんですよ(笑)。
林:おもしろい奥さんですね。奥さんのほうも“異能の人”なのかな(笑)。
マキタ:変なノロケ話に聞こえたらイヤなんですけど、仕事もないのに「俺はこんなことやりたいんだ」みたいな、たいそうなことを語る妙な男と結婚して、子どもを産んだりするおまえのほうがよっぽど変だよ、と僕は思ってました。それぐらい強烈な女性なんですよ。