米アメリカ疾病予防管理センター(CDC)でも『コロナ後の健康管理』と題したガイドラインで、コロナの後遺症でME/CFSが起こる可能性を指摘し、PEMの原因となる運動や活動の管理が有効である可能性について伝えている。
日本では、厚労省が昨年12月、新型コロナ後遺症の診療の手引きとして、『罹患後症状のマネジメント』(暫定版)を作成し、公表している。CDCの解説を引用しながら、ME/CFSの症状と似たものが出る可能性を紹介しているものの、先のWHOのリーフレットなどと比べると、PEMの対応について詳細な説明は書かれていない。
専門家らからは「対策に遅れをとっているのは明らか」「不適切な治療につながっている」「後遺症対策に予算を十分につけてこなかった結果」などと政府の対応に対して批判的な声があがっている。
先の山村部長はこう語る。
「ME/CFSの治療は、一般の医療機関でもよく理解されていない実態がある。病後は早期リハビリが有効であると信じているドクターは多いです。しかし、腎臓病や結核など安静にしないといけない病気はあり、ME/CFSは本質的にはまず安静にしていないといけない病気。海外の情報を参考にし、より適切な後遺症の対策を周知させていく必要があると思います」
仕事ができなくなり、経済基盤を失うことで、生活苦に陥る人も多いのが実態だ。後遺症を苦に、自殺したと見られる事例も聞かれる。平畑院長も「突然動けなくなったショックに加えて、収入も減り、周囲に病気を理解してもらえないことも患者を深く傷つけ、追い込んでいる」と指摘する。悲劇を起こさないためにも、適切な対応につながる環境整備が求められている。
(AERA dot.編集部・吉崎洋夫)