竹増貞信/2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
竹増貞信/2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
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「コンビニ百里の道をゆく」は、52歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。

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 新年度に入ってまもなく1カ月。なかには仕事に対するモチベーションが下がってきたという人もいるのではないでしょうか。理由は人それぞれですが、急にはモチベーションを上げられませんね。

 そんなとき、仕事以外に自分の時間をつくってみてください。趣味でもいいし、勉強に充ててもいい。あくせくせずに自分の好きな分野を磨く。そうすると自分は本当は何がしたいのかが、見えてくるかもしれません。いまは一つの仕事にしがみつく時代ではありませんから、フラットに自分を見つめ直す機会を持つのもよいでしょう。

 かくいう私も前職の商社時代、モチベーションが上がらず苦労したことがありました。商社では長く食肉を担当し、3年間米国駐在もしました。帰国命令が下り、「日本のお客様が俺を待っているぞ」と意気揚々としていたら、広報部への異動を告げられました。「自分はもう営業から必要とされていないのだろうか」「人の仕事をPRする役目か」と、がっくりしましたね。

モチベーションが下がった時は、自分を見つめ直す時間をつくってみてはいかがでしょうか(写真:gettyimages)
モチベーションが下がった時は、自分を見つめ直す時間をつくってみてはいかがでしょうか(写真:gettyimages)

 ちょうど釣りを始めた時で、休みには手こぎボートを借りて海に出て、葉っぱのように浮かんでいなければ自分を維持できなかった。それでもメディアの人たちと昼夜つきあううちに、社会の動きを学び、そのなかで私たちの会社がどう受け取られているのかを考えるようになりました。

 そうした「広聴活動」に目覚めてからは、以前なら「この契約は自分が取りたかったな」と思うような発表も、前向きに捉えられるようになりました。広報部には5年いて、その後も営業以外の畑を歩みましたが、モチベーションが自然にわき上がるようになりました。もう、海に出る必要はなくなったのです。

 コロナ禍のピンチも必ずチャンスに変えることができる。このようにポジティブな捉え方も、この経験から生まれています。

竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長