児玉先生はこの話をするとき、少し涙ぐんでいた。
「正しく自分の役目を全うする」
というようなことをおっしゃっていたっけ。あたしもラジオパーソナリティーの大竹まことさんも、つられて涙ぐんだ。
あたしや大竹さんなら、日本がきな臭くなってきて大勢がその熱に浮かされても、その中で「戦争反対」といいつづけることになるんだろうか。幼子の母ならば、この子を絶対に生かすという誓いなんだろうか。児玉先生の覚悟に触れたあたしは、やる、絶対に、と心の中で思った。
室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中
※週刊朝日 2022年5月6・13日合併号